にほんブログ村 小説ブログ 人気ブログランキングへ

恋愛小説「ヘヴンズDream」2

リアルな夢をみた2

 一昨日、現実の世界でわたしは友達の佐智とコンビニのカフェコーナーで口論をした。
 口論、というよりは一方的なわたしからの攻撃に近かったのだが。そして、わたしのとんでもない夢とは、そのリアルシーンからはじまったのだった。

「どういうつもり?」

 曇った声を出したわたしは、隣の席に座っていた佐智の顔を、食い入るようにじっと見つめた。
 季節は初秋 ─。
 暑い夏が終わり、大きなウィンドウから見える空は、透き通るようにどこまでも青い。わたし達が座っていたカフェコーナーには、柔らかく注ぐ太陽の光と同時に、ピンと張り詰めた重苦しい空気が漂っている。

「どういうって。なにが?」

 佐智は、カフェオレのパックを持った細い指を緊張させると、不安な色を浮かべた大きな瞳をこちらに向けてきた。この店は、佐智がバイトをしているコンビニだ。
 どうしても確かめたいことがあって、彼女のバイトが終わる時間に申し合わせて押し掛けたのだった。

「隼人とは、いつから?」

 できるだけ平静を装って穏やかに声を出したが、おのずと自分の視線が佐智を睨み付けていることに気付く。

「隼人くん? いつからって、何のこと?」

 カフェオレをテーブルに置いた佐智は、視線を微妙に泳がせながら少し首を傾げてみせた。
 彼女は、ふわふわの長い髪に大きく真っ黒な潤んだ瞳を持っている。小柄な色白で、守ってあげたくなる程の華奢な体つき。愛想がよく、誰とでも仲良くなれる人なつこい彼女は、万人に好感を持たせてしまうキュートさがあった。
 わたしの彼氏だった隼人も、洩れなくこの愛らしさに特別な感情を持ってしまったようだ。
 はぐらかす態度を見せる佐智に威嚇するごとく、握りしめた右手で思いきりテーブルを叩いた。その振動で、彼女の前のカフェオレのパックが小刻みに揺れ、ほんのわずかに移動した。

「誤魔化すんじゃないわよ。あんたたち、付き合ってるんじゃないの?」

 落ち着いて話すつもりが、つい声を張り上げてしまう。

「凛ちゃん?」

 佐智は動揺したように、大きい瞳をさらに見開いた。
 コンビニの中に居た周りの客から、一斉に向けられた視線を感じたわたしは、上体を佐智に向け、顔と顔の距離が1センチのところまで近付くと声を抑えて呟いた。

「どうなの?さっき隼人がわたしと別れたいって言ってきたんだから。忙しくて当分逢えないから別れようって。でもね、最近、彼の様子がおかしかったんだよね。だから追求してやったの」

「追求…?」

「そう。そうしたら案の定、好きなコができたって。佐智が気になるんだって白状したの。わたしに黙って彼と付き合いはじめてるんでしょ?」

「ち…違うわ。彼とはそんな関係じゃない」

 佐智は、少し怯えたように視線を逸らせる。
 その視線を掴まえるように、彼女の顔を覗き込んだ。

「なら、どういうこと? 隼人があんたを好きになるって、どこでそうなったの?」

「どこでって…どうしてかな…」

 微かに震える口許を歪めて苦笑いした佐智の瞳を、わたしは串刺しにするように睨みつけた。

「てかさ、わたしの知らない所で、ずっと二人で会ってたってこと?」

「え…。まあ、二人で会ったことはあるけど…」

「…ふ〜ん、で、どんな用で会ったのかは知らないけれど、なんで佐智はそのことをわたしに黙ってたの?やましいと思ったから?」

 わたしの視線から逃げるように瞳をうろつかせる佐智を凝視したまま、彼女の内心を探り続ける。
 容疑者の口を割らせようとする取調官のような上位に立った気分にはなるが、決して心地いいものではない。とにかく正直に全てを話してほしかった。

「黙ってないで答えて。だいたい友達の彼氏と二人きりで会うって、おかしくない?」

 質問に対して限りなくじれったい受け答えをしてくる佐智に、ヒートアップしそうな気持ちを何とか抑え込んで問い続けた。

「だって、凛ちゃん、わたしと隼人くんが会ってたの知ったら、激怒しそうだったから。わたしが黙っていれば、あなたたちの間に波も立たないと思ったの…」

「は?激怒?佐智が納得できる理由を言ってくれれば怒んないし。…それで、隼人とはどういう理由で会ったっての?」

「どういう…って」

 小さく固まっていた佐智は、戸惑うような表情でゆっくりと顔を上げ、こくっ、と息を呑んだ。

「ねえ佐智、もう正直に全部言って!」

 わたしは、イライラとした口調で問い詰める。

「…分かった。…隼人くんは、わたしがバイト中にここに来るようになって、バイト帰りにお茶に誘われたりとかで…会ってたの」

「は?」

「ごめん、彼、いつも待ってくれてたから仕方なくて…。断りきれなかったの」

「…ふ〜ん。…で?」

 彼女の言葉を聞きながら、自分の頭にどんどん血が集結していく感覚を覚えていた。
 腹立たしさと悔しさで、テーブルの上に乗せていた自分の手が小刻みに震えていることに気付く。佐智はそんなわたしの様子を見ながら、ためらいがちに言葉を続けた。