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恋愛小説「LOVEメタル」2

イトコの百合のひとめぼれ2

 恋、とは言ってもチラ見の一目惚れみたいだが…。

「ほら、お昼ご飯食べないと、冷めるよ」

 苦笑いしながら、テーブルの上の手付かずのままの昼食をすすめる。
 百合は笑顔を見せたあと、手を組んで日本では見慣れないお祈りをはじめた。もともと祖母が敬虔なカトリック教徒だからだろう、その影響を受けているようだ。

「父と、子と、聖霊のみ名によって、アーメン」

 百合は十字を切ると、箸を持って味噌汁に口をつけた。
 彼女と暮らしはじめて日にちはそう経っていないが、自分の周りには居ないキャラに、すっかり振り回されている感覚がある。従姉妹で、しかも都会生活には馴染みのない彼女だから、ある程度の面倒を見なくてはと思っていたが、恋愛に対しては別物だ。他人の恋愛ごとに関わってもろくなことがない。至って放任でいたいのだ。

 とはいえ、相手が鹿嶋となると、少し話が別になる。

 鹿島とわたしはバイトの同期で同じ歳だ。そして、それ以外は素性は深くは知らない。
 はっきりと分かっていることと言えば、彼の外見はいい意味でも悪い意味でも目を惹かれるということだ。
 その顔立ちはすっきりと端整で、背は高く、程よく鍛えられていそうな体つき。加えて、さらっとした明るい色の髪も美しい。肩下まで伸びた男性にしては長い髪も、労働中はスッキリとまとめていることが多くて品が感じられる。
 バイト先のカフェダイニングでは、鹿島はキッチンがメインだが、たまに人数不足でホールに駆り出されることがあった。そういうときは必ず鹿島を目にした女性客から、彼の名前やアドレスを、こっそりと聞かれるのだ。
 そのことを考えれば、一目惚れした百合の気持ちも、まあ、分からなくはない。

 でも!
 だけれども!

 バイト先の客相手にはきっといい顔をしているのだろう。裏の彼は、そんな甘いものではない。

 とにかく、百合の気持ちを冷まさせなくてはいけない。百合も女性客たちも、彼のチラ見しただけの外見に惑わされているだけだ。なんと言っても素の彼は、その美しさからは想像できないような超無愛想男子だった。彼から感じ取れる雰囲気は、いいように言えば物憂げだが、どことなく退廃的かつ気だるい。それもそのはず、噂に聞いたところによるとメタラーだということだ。メタルバンドのボーカルらしい。

 ということは、背徳的かつアンチキリストなわけで、悪魔崇拝などもしているかもしれない!
 あり得ない!よく動画で見る白塗りなんかして叫んでるアレなわけでしょ?

 話は戻るが、祖母の影響を受けているのは百合だけではない。わたしの母も、そしてわたしも、深くはないがそれなりにキリストの神様には親しみ一目を置いている。そのわたしたちにとって、メタラーを好きになることは、とても大げさに言えば神に背く行為だと言える。

 まだ百合は彼が悪魔崇拝的音楽活動家だとは気づいていない。
 なんとしてでも、百合を悪魔の道へと踏み外させないようにしなければいけないのだ。