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恋愛小説「LOVEメタル」24

マイノリティワールド7

 その視線に胸が高鳴り、思わず目を逸らせようとした瞬間、彼は少し前のめりになって魅惑的な眼差しでわたしの瞳を掴んできた。

「俺と、しないか…?」

 誘い込まれそうな囁きと紫色に映ろぐ瞳に、鼓動の動きを抑えられず、軽く目眩を感じた。

 …は? なにを? 目的語がない!

 何をするのか聞きたいが聞けない、そんな微妙な空気感で自分が大きく乱されていることが分かった。

「な? 気持ちよくなれる…からさ」

 彼の甘く熱い視線から、逃れることができない。

「好きなんだろ?」

「…なにが」

 わたしが言いかけた言葉をさえぎるように、彼は声を重ねてきた。

「いいから、頷けよ」

 その強い調子に思わず反応してしまい、首が縦に振られてしまった。

 え? ちょっと待って!

「それでいい」

 ふっと笑う彼は、ソファから立ち上がると、わたしに手を差し伸べてきた。

「行くぞ」

「…え」

「ほら」

 固まって動けなかったわたしに呆れた表情をつくった彼は、腕を柔らかく引っ張ってくる。
 相変わらず、無愛想な言葉とは反比例した優しい扱いに、胸が、どくっと動いた。椅子から立ち上がったわたしは、彼との距離が近いことにまたどきどきする。

 どうしたのだろう。というか、彼は一体どこで何をしようと…??

 捕まれている腕が溶けてしまうかと思うほど熱く感じた。

「栄斗! てめ、機材片付けろよ」

 いきなり、横から声が飛んできた。
 視線を向けると、ステージでギターを弾いていた鹿嶋のバンド仲間が、不機嫌そうに近付いてくる。腰近くまで伸びた髪がメタラーぽいうえ、腕の色鮮やかな和風タトゥがいかつい。

 あれ…?

 鹿嶋のタトゥには反応してしまうが、彼のものには何も感じないことに気付く。

「すぐ行く。あ~、ちょうどいいな、紹介しとく…」

 鹿嶋はそう言って、長髪の彼にわたしを視線で示した。

 紹介? わたし…? って、まさか、え、なに?

 何を言われるのだろうと緊張しながら鹿島を見上げた。

「新しい仲間。お前も、キーボードほしいって言ってただろ?」

 彼の言葉に、耳を疑った。

 なんですと??

「え、まじ?? やっと見つかったかー!」

 長髪の彼は、やたらと嬉しそうに声をあげてわたしを見つめた。

「え… あ、いえ…」

「俺、このバンドのリーダーで、拓人。ずっと、キーボードは探してたんだ!頑張ろうな!」

 彼は興奮気味にわたしの手を両手で掴むと、上下に思い切り振った。
 その喜びようを見ると、〝違うんです!〟とは言えなかった。 というよりは、少し強面の彼に、この状態で仲間入りを断ることなんて怖くて出来なかったのだ。
 鹿嶋が、甘い言葉で〝しよう〟と誘ってきたのは、〝バンド一緒にしようぜ〟だったのだ。

 紛らわしいにもほどがある!!

 ちらっと鹿嶋を見ると、彼は、後ろを向いて腕を組み、笑いをこらえていた。

 こいつ!

 今日、彼という人間が意外によく笑い、人をからかうことが好きな性格だと知った。そして、わたしは、なぜか彼等のバンドのキーボーダーとして認められた?ようなのだが…。
 全く予期しない出来事に、否応なしに巻き込まれてしまった感覚だった。