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恋愛小説「LOVEメタル」3

イトコの百合のひとめぼれ3

 わたし、杉本美優は、ほぼ毎日のように昼はレンタルビデオショップ、夜はカフェダイニングでバイトをしているフリーターだ。
 こういうバイト三昧の日々を送っているのは、自分探しの成れの果ての結果。去年の夏、もとから興味のなかった大学生活を退いてから、自分というものを模索しつつ、情熱を傾けられる〝何か〟を探しはじめた。だが、想像していた以上に〝何か〟は見つからず、一年以上〝情熱〟の元を探し続けている。
 基本的に何事にも好奇心が薄いのだろうか、気持ちを掻き立てられるものに出会えない。最近は、〝何か〟が見つからない苛立ちを誤魔化すようにバイトに明け暮れ、考える時間を作らないようにしていた。
 昼間のバイト先は実家から徒歩五分の場所にあるが、夜のバイトのカフェダイニングに行くには電車に乗らなくてはいけない。近くもなく微妙な遠さなのだが、今時のお洒落な空間であることと、なにより時給の良さが魅力的な店だった。
 働いてさえいれば、いざというときの資金にもなる、という言い訳を作りながら、今日も夜のバイトに向かっている。
 行き慣れたバイト先。だが、今日は気持ちが重い。なにせあの鹿嶋に手紙を渡したいという百合を連れて向かっているのだから。

なんとしても、百合を諦めさせなくてはいけない!

百合には、『鹿嶋がバイトに来る時間を待ち伏せして手紙を渡すといいよ』とアドバイスしていたが、この忠告はわたしのちょっとした計画だった。
 彼の私服はほぼ見たことはないが、メタラーといえば、かなり激しい装いが期待できる。それを目の当たりにすれば百合も引くかもしれない。
 そう、グロいバンドTシャツを着て、鋲が打たれたリスト・バンドなんか付けて、バッグルだらけのロング・ブーツなんか履いていてくれていれば。そして、極めつけ、逆十時のペンダントなんてしてくれていれば!確実に百合も目が冷める?はずだった。

力になれなくてごめんね、百合…。

 とりあえず、先に心の中で謝っておいた。
 バイト先のカフェダイニングは、駅徒歩十分の歓楽街の一画にある。そういう理由で時給も高い。暑かった夏も過ぎ、夕方には少し肌寒く感じる季節に入っていたが、このあたりは年中夏の夜の夢のようなイメージだ。ただ、午後六時という今の時間は、まだ人通りも少なく町並は静かだった。
 雑居ビルの一階にあるカフェダイニングの裏口がスタッフの通用口になっている。正面玄関から裏口に行くまでの細い通路の片隅で、わたしたちは鹿嶋を待つことにした。

「美優ちゃん、緊張してきた…」

 隣で、ガチガチになっている百合がいる。
 そんなに固くならなくてもと思ったが、知らず知らずに彼女の緊張が移ってきたのか、わたしまで変な動機を感じはじめた。

「ねぇ、わたしの服装、おかしくないかなあ?」

 百合は、俯き加減に自分が着ているワンピースを見ながら聞いてくる。

「…大丈夫。可愛いから」

 返事はしたものの顔がひきつったことが分かり、素直すぎる自分の反応が怖くなった。
 百合がとても頑張ってお洒落をしているのは分かるのだが、やはり今時の女子からはズレている。家を出るとき、デザインが古いピンクのフリルワンピに着替えてきた彼女を見て卒倒しそうになってしまった。
 だが、色白で華奢、真っ黒で潤んだ瞳という素材の良さが、田舎ぽさを多少なりとも打ち消してくれているところがあり、微妙に許せるセンスにおさまっている。

 まあ、人の服装のことをどうこう言えたものではないか…。

 ショート丈のカラーデニムと白シャツを合わせて、ハーフブーツを履いた無難な自分に心の中で苦笑いした。

「美優ちゃん!」

 百合が小声でわたしに耳打ちしてくる。
 振り返ると、通路を歩いてくる鹿嶋の姿があった。

 あれれ?