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恋愛小説「LOVEメタル」8

イトコの百合のひとめぼれ8

「美優ちゃんは、わたしの幸せを望んでくれてるの?」

 うるうる、きらきらした円らな瞳がいじらしい。
 そういう眼差しを向けられると、出来る限りのことはしてあげたいと思ってしまう。

「当たり前でしょ。百合が幸せになれることなら何でも力になるよ。百合に似合いそうな、誠実で真面目そうな男子を探そうか?」

「ううん、わたし鹿嶋さんがいいの!」

 百合は駄々っ子のように思いきり頭を横に振る。

「は?」

「わたし、鹿島さんが悪魔を指示していようが、彼がいいの!!きっと、わたしが更正させてみせるから!神様も、それを望んでいるはずなの!だから美優ちゃんお願い、彼に電話をくれるように伝えて!!」

 百合の言葉に数秒思考停止したわたしは、

「はああ!?」と、 叫んで百合から離れた。

「ムリむり無理~! 電話がないってことが彼の返事でしょ! 諦めたほうがいいよ」

「…美優ちゃんは、わたしの幸せを望んでくれるって言ったのに…。嘘ついたんだ」

 百合の瞳がまた水分を含みはじめ、今にも泣き出しそうに顔が歪んできた。

「嘘なんてついてないよ。わたしは百合の幸せのために…」

「嘘つき!!」

 彼女の恨めしそうに見つめてくる瞳からぽろぽろと涙の粒が落ちてくる。
 そして、ひくっとしゃくり始め、今にも大声で泣き出しそうな表情をつくった。

「ちょっ…。もう、分かったから泣かないで!」

「ほんと? なら彼に電話してって伝えてくれる?」

「分かったから…」

 分かったから。百合の泣き落とし計画は。
 結局引き受けてしまう自分が百合を甘やかせているということも分かっていたが、彼女は絶対に引き下がらないだろう。朝まで泣かれても埒が明かない。

「ありがと。やっぱり美優ちゃん大好き!」

 彼女は泣いていたことが嘘のような笑顔を見せたかと思うと、ぴょんと立ち上がって上機嫌にあっさりと部屋から出ていく。

 また、やられてしまった…。

 一人になった部屋で、天井を仰いでため息をついた。
 一体、田舎の祖父母は百合をどういうふうに育てたのだろうか。百合を可愛がりすぎたのだろうか。あれほどのしたたか者なら、鹿島との間にわたしを入れなくとも、自分だけでもアプローチできそうなものだろう。
 だが相手が鹿嶋となればかなり手強いということも、無意識に察知しているのかもしれない。
 わたしのような扱いやすい人間を、攻め落としたい鹿島との間にワンクッション入れたほうがいいと感じているとすれば…。
 百合は、わたしが思っているよりもずっと大人な女豹かもしれなかった。
 なににせよ、結局また鹿嶋と顔を付き合わさなければいけないということだ。手紙を渡して以来、バイトの持ち場が別の彼とは、面と向かっては顔を合わせていない。

とても平穏な日々だったというのに…。

「電話をしてあげて」と伝えればいいのだろうか。きっと、またあのメタル野郎は吐き捨てるように、〝面倒〟だとか、〝ママじゃねえだろ〟とか言ってくるに違いない。
 想像しただけで、気持ちが重くなることを感じていた。