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恋愛小説「天子の法則」1

わたしの法則を紹介します1

「牧さん! そこは右周りでしょ!」

「あ、すみまっせ~ん」

 作り笑いで謝りつつも、心の中では右でも左でもどっちでも別にいいじゃんと舌を出しながら、東洋の音色に合わせて適当に身体を動かしていた。
 ダンススタジオの1室、十数名ほどの生徒達がウエスト回りを露出させたレッスン着を身につけて、腰にシャラシャラとコインの音が鳴るスカーフを巻いて踊っている。
生徒の年代は二~三十代がメインで、ダンス経験が豊富な数人を除けば、みんなお遊戯的な趣味レベルの踊り方だ。

「ほら、皆さん!気持ちを入れて! 発表会が近いんだから!」

 腰まで届きそうな髪を振り乱しながら、鏡の前で必死に叫んでいる講師の姿を冷めた感覚で見つめた。
 発表会といっても、客として足を運んでくれるのは生徒達の身内だけだ。そんなに頑張る必要もないだろうに。

「牧さん、笑顔!!」

 いきなり飛んできた絶叫に近い声に、無理やり口の端を上げて笑ってみせた。
 鏡に写る自分を見ると、なんだか滑稽になる。気持ちが入り切らないからだろうか、ダンスをしているはずなのに体操をしているようで、不細工な自分の姿が女コメディアンのように見え、思わず噴出してしまった。
 

あ。まずい、と口を塞いだときにはすでに遅く、

「牧さん!! ふざけるなら出ていきなさい!!!」

 と、即効で講師からのきつい一撃を食らってしまった。