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恋愛小説「天子の法則」10

実証する手段を使っていきましょう6

 4月になり第一週目の土曜日が来る。
 今日は待ちに待った朋美たちとのコンパの日だった。

 完璧!!

 化粧にたっぷり時間をかけて着る服を選んだわたしは、鏡で全身をチェックして満足したように頷いた。もちろん、綺麗とか可愛い、とかの意味での完璧ではない。女子らしく、それなりに自分のアピールポイントを最大に引き出しているという意味だ。

 法則を実証するための手段その2。

「品を失わない程度の色気で押せ」

 膝より少し上の淡いピンクのスカートに、白いブラウス。
 ブラウスは、胸の張りで少し横のシワができるくらいのサイズが良い。大きめの胸を強調してくれ、男性受けがすること間違いない。アクセサリーは、あくまで小さく上品なもの。まあ、あまり服装にこだわると引かれてしまうので、この程度がいいだろう。最後、淡い石鹸の香の香水。で完璧だった。
 瑞穂のように容姿端麗ならこんな苦労はなかっただろう。素のままで、いい男を捕まえられる。鏡に映った、お世辞にも器量良しとはいえない顔に精一杯の笑顔を浮かべた。わたしの武器といえば、この笑顔とふくよかな胸くらいのものだった。

 絶対、今日は未来の幸せに繋げられる出逢いを見つけるから!

 鏡の前で気合を入れたわたしは、早速コンパで成功するイメトレをしつつ、将来の伴侶に出逢う希望に満ち溢れながら足取り軽く部屋を出た。

 はずだったのだが…。

「幽体離脱していいかな…?」

 隣の席に座っていた朋美に小声で呟いた。
 希望が失望に変化することは、よくあることだ。
お料理もワインも美味しいイタリアンのお店。本場のバールそのものの内装は、とてもお洒落で可愛い空間。出会いの場としては申し分ないこのスペースで、男女10人が集まれば、それなりに盛り上がって楽しい空間になるはず。だったのだが…。

「今日だけの我慢だから…。あ、席かえしようか?」

「…席かえしても一緒でしょ」

 女子メンバーはわたしと朋美、そして彼女の友達が数名で、悔しいがみんな並以上に可愛かったりする。
 だが男性メンバーは…。鳥居は横に除けておくとして、三神が集めてきた仲間たち=期待通りの金持ち。という図式は成り立たなかった。やはり類は友を呼ぶのだろうか、とても一言では表現できない不可思議なメンバーが集まっていた。
 ひげ面でやたらテンションが高いバックパッカー、うんちく大好きなアングラの劇団員、萌えアニメ大好きな自称漫画家、と、どれもこれも難癖がある上に生活にあまり余裕がなさそうな人種ばかり。〝お金持ち〟類友ではなく、〝変わり者〟類友を集めてきたようだ。
これだけの濃い面子を集められる三神を、違う意味で尊敬した。
 とりあえずは男女が向かい合うような席順で座ってはいるのだが、女子メンバーが相当に引いているのが分かる。

「はやくお開きにしたいんだけど…」

 ため息まじりに小声で朋美に呟いていると、いきなり鳥居がわたしたちの後ろから顔を出してきた。

「楽しんでる? 早速だけど、牧さん、俺と場所変わってくんない?」

 さわやかな笑顔が心の暗闇に光を放つ。
 彼は、盛り上がりに欠けるこの場をどうにか楽しくしようと努力していることが分かった。他のメンバーがどうしようもない分、彼の笑顔や行動は救いの神のようにも感じられた。