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恋愛小説「天子の法則」2

わたしの法則を紹介します2

「さっきのは天子が良くないんじゃない?」

 寒そうに身体を縮めながらホット珈琲にミルクを入れて呟いた瑞穂は、呆れた表情でわたしを見つめた。
 駅前のチェーンカフェ。まだ三月の半ばで肌寒い季節だが、店内が満席でオープンスペースに座らざるをえない。

「だってさあ…つい、ね。それにあの先生、必死すぎなんだって」

「仕方ないよ、来月はスタジオの発表会だし。今度の発表会は、うちの先生もゲストを呼んでかなり気合い入れてるみたいよ。それに、わたしたちだって練習の成果を出せる唯一の機会なんだから。天子だって、誰か見に来てもらうんでしょ?」

「まさか。誰も来ないよ。恥ずかしいじゃん」

 さっきまでレッスンを受けていたダンスのジャンルはベリーダンスだ。
 あんな下着みたいな衣装を着て、体操のような踊りをしているところを知り合いに見られると想像するだけで卒倒しそうだ。
 しかも自慢じゃないがわたしはEカップで結構な大きさの胸だった。そんな体系で、上半身がブラのような衣装を身につけると目立ってしまうことは分かっている。

「じゃあ、なんでベリーダンスを続けてるのよ?」

 瑞穂は、理解に苦しむような表情を向けて聞いてくる。

「そんなの、いい男を捕まえるための女磨きに決まってるでしょうが」

 そう、わたしは、なにより〝いい男〟を捕まえるために日々努力をしているのだ。
 ベリーダンスをしているのも、すばらしい未来の旦那をしっかりと捕まえられる色気を身につけるため。それ以外のなにものでもなかった。だから発表会だろうがなんだろうが、とくに気合いは入らない。発表会に旦那候補が見にくるなら別だが、客として集まってくるのはダンススタジオの生徒達の知り合い、いわゆる身内だ。頑張ろうなんて気持ちが起こるはずがなかった。