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恋愛小説「天子の法則」6

実証する手段を使っていきましょう2

 だが悪いことばかりではないようで、さっそくの出逢いのきっかけがその日の昼休憩に舞い込んできた。

「え?コンパ?いつ?行く!」

 つい大きな声を出してしまったわたしに、ビルの地下の食堂で一緒にランチをしていた経理事務の吉岡朋美は、

「声大きいよ」

 と、小声でいさめてきた。

「あ、ごめんね」

「こういう話、会社の人に聞かれて噂されると面倒だから。で、予定は来月の1週目の土曜日ね」

 彼女はそう言ってきょろきょろと周りを気にする。

「で、コンパって、どういうメンバーで?」

 今度は出来るだけ小声で、隣に座っていた朋美の耳元で囁いた。
 彼女はわたしが会社に派遣されてから、社内のこといろいろと教えてくれていた。女性が少ない社内で、しかも同い年だということもあるのだろうか、週に数回はランチに誘ってくる。セミロングの髪をきっちりとまとめ、真面目で控えめな印象の朋美だが、意外にしっかり者で頼りになった。ただ、あまり社交的ではない彼女が誘ってくるコンパに、少々の不安は感じていた。

「メンバーね、それがね…」

 少し苦笑いした彼女は、わたしの耳元に口を近づける。

「え! 鳥居さん!?」

 思わず再び声を大きくしてしまったが、すぐに口を手で塞いで朋美の顔を見た。
 彼女はいつの間に鳥居と接していたのだろう。オフィスでは全く関わらない二人の接点が分からない。何気に大人しい振りをして、実は侮れない女??なのかもしれない。

「あ、鳥居さんね、実は兄貴と同じ高校で、しかもクラスメイトだったのよ。わたしもその頃から彼を知っていたし」

 朋美は、わたしの心を読んだかのように苦笑いして言葉を付け加えた。
 なるほど、それなら納得もいく話だった。だが鳥居にはたしか彼女がいるはずだが、別れたのだろうか。まあ、彼ほどの爽やかさや人間的魅力があれば、この際少々年収が低くてもいいとするか…。

「天子ちゃん期待してるかもしれないけど、鳥居さんは飾りみたいなものだから。彼女いるしね」

「なんだ、やっぱりそうなんだ。飾りってことは、じゃあ他のメンバーは?」

 少し気落ちしつつ、味噌汁を飲みながら朋美の言葉を待つ。

「他は、三神さんと、その仲間たち」

 朋美の言葉を聞いて耳を疑ったわたしは、一瞬首をかしげた。

「ん?なんですと?」

「だから、三神さん。と、その仲間たち」

 いや、聞き間違いではなさそうだ。
 一瞬、くらっと意識が遠のいていくことを感じた。

「…三神さん…?て…。ねえ、もしかして、鳥居さんに頼まれたの?三神さんの彼女をつくってあげたいからコンパの機会をつくってほしいとかで?」

「ううん、わたしが鳥居さんに頼んだの。三神さんとその友達を連れてきてって」

 淡々と答える朋美に、理解できない!といった目を向けている自分が分かった。
 彼女の超マニア振りを今まで見抜けなかったとは!!
 その異物を見るような視線を感じたのか、彼女はわたしの顔を見つめて微笑んでくると諭すように呟いた。

「やだ、勘違いしないでよ。類は友を呼ぶ。金持ちは金持ちを呼ぶ。きっと三神さんの仲間ならお金持ちが多いんじゃないかと思って」

「…え」

 彼女の言葉の予想しなかった展開に、目を丸くした。

「三神さん本人は問題外でも、もしかしたらその周りには居るかもしれないでしょ。甲斐性もルックスも飛び抜けた男性が」

 わたしは、彼女の言葉を聞いている間に、自分の瞳がきらきらと輝いてきていることが分かった。

「朋美ちゃんって…天才?」

 なんて素晴らしい友達に出会えたのだろう。
 こんなにも価値観が同じ人物に会えるとは。そうか、社長の息子である三神がいくらダメダメであろうと、その周りには金持ちの友達がいるだろう。それに、三神は全く違うタイプの鳥居とも仲がいい。まあ、仲がいいというよりは、鳥居が三神の世話をやいているというイメージなのだが、他にもいい男友達がいるかもしれない。

 なんにしても… 期待できるかもしれない!!

 そう感じたわたしは、茶碗を持っていた朋美の手を、無理やりに両手で包み込んだ。

「…え、なに?」

「朋美ちゃん、いい出逢いを見つけて一緒に幸せになろうね!」

 少し迷惑そうに身体を引いて、ひきつった笑いを浮かべた彼女に、満面の笑顔を向ける。
 そのとき、わたしはすでに大きな家に住み、素敵な旦那様と可愛い子供に囲まれた家族の風景を想像して、来月の出逢いに賭ける誓いを心の中にたてていた。